2015年06月01日

サン バッジ カンパニー&エル・エー・ピー・ディー・

 『遂に....』 そして 『続報....遂に....』 などと独り言を続けてきました.....前回はエル・エー・ピー・ディー・(以下ロス市警)のカーグ社製バッジまででしたが、今回はサン バッジ カンパニー(以下サン社)の変遷をLA市警バッジを中心に綴っていきます。
 まずは、ホールマーク(メーカー刻印:以下HM)の変遷です。 サン社は1958年に ”Karl Eckhardt” がLA市警のシリーズ5バッジを製造したこともある ”Geo Schenck” から会社を買い受け創業したといわれています。ちなみに、ヴィ&ヴィ社とエイプリル社は元サン社の社員が起業しています。
 最上段左は最も初期のHMでLA市内に工場があった時代のものです。その右は1970年代から使用していたものですが、1981年のAから始まる製造年のアルファベットが入っていませんでした。 しかし、LA市警バッジの場合は1976年以降1987年まではアルファベット記号を刻印せずにカーグ社から買い取ったダイ(金型)に使用していました。
 1981年からは従来のデザインに製造年を表わすアルファベットを刻印するようになり、E:の1985年途中にHMのデザインを変更しましたしかし、約1年半という短期間で再度HMデザインを変更しましたが、3段目真中のF(1986年)記号のHMデザインはさらに短期間でG(1987年)のデザインに変更しています。 Fの新デザインからアルファベットはHM内に刻印されるようになりました。 2006年に最終文字のZとなりましたが、引き続き2007年はAA→2008年はABというように2文字をHM内に刻印しています。
 この中で3段目真中のHMにCとEが、4段目右のHMにGとIがダブル刻印されていますが、3段目を例にしますと、最初1983年を表わすCを刻印したが、その時点では次の製造過程に進まず保管した後、注文を受けてから次の製造過程に進んだため実際の製造・完成はE:1985年にしたものです。 これは2007年にオンタリオの新工場を見学した折、引率してくれた副社長に聞いたところ、注文が入った時点でバッジ型を打ち抜いた後裏面にHMと製造記号を刻印するが、余分がでてしまった場合は保管しておき、再度注文が入った時点でその時の製造記号を入れることがあるため二重に製造記号が刻印されることもあるとのことでした。
 なお、サン社は2007年の時点で、カーグ社から買い取ったダイを含め20個以上のLA市警シリーズ6バッジのダイを所有していました。
サン バッジ カンパニー&エル・エー・ピー・ディー・


 ここで、LA市警バッジの製造過程を簡単に説明しますと、まず平板からバッジ形状を型抜きし、次にバッジ金型を油圧プレス機でSTAMPING:圧印した後、裏面にHM・製造年アルファベット刻印 【ここまでで保管することあり】→製造年月打刻→バッジナンバー機械彫刻→ピンロウ付け→カーブ付け→手作業でハードエナメル(クロワゾネ)筆入れ→焼き窯にてハードエナメル溶着→FINISHING:軽石の入った振動研磨機でハードエナメルのバリ取り→表面研磨→ゴールド部分をマスキングの上、クロームメッキ→POLISHING:再研磨→検品後クリア塗料吹き付け→焼き付け処理(サン社ではこれをクリア・ハード・ベイクド・ラッカーコーティングと称している)→最終検品となります。
  ※サン バッジ社カタログから抜粋
サン バッジ カンパニー&エル・エー・ピー・ディー・


 次は、サン社がLA市備品担当部局に提出したバッジ見本のようで、フラット状態のPOランクバッジですが、これはカーグ社から買い取った金型で初期の良い状態のもののようですので、特徴などがハッキリ現れています。最新のバッジはランク文字が細くなってしまいましたが、”F”の文字の中横棒が真ん中より下に位置する特徴は変わっていないようです。
サン バッジ カンパニー&エル・エー・ピー・ディー・


 次は、カーグ社(左)と、これを買い取ったいわゆるカーグ・サン・ダイのサン社(右)の厚みのあるシェルバック状の裏面です。右の8-79はデェテェクティブ・ランクのものですが、1979年にそれまで刑事のランクタイトルであった”インベスティゲーター” を”デェテェクティブ” に変更したため、この年にデェテェクティブ・ランクバッジは多量に作られました。
サン バッジ カンパニー&エル・エー・ピー・ディー・


 同じ金型を使用していますが、HMのカーグ社刻印を金型から削り取った跡にサン社HMを打刻しています。
サン バッジ カンパニー&エル・エー・ピー・ディー・


 次は、製造年月が1-80(左)と8-87(右)のカーグ・サン・ダイですが、右はHMを真中に打刻せず左側に縦打ちしています。
サン バッジ カンパニー&エル・エー・ピー・ディー・


 次は、11-87:G(左)と9-96:P(右)ですが、前出の8-87バッジまではカーグ・サンのシェルバック状でしたが1987年途中からスムースバックに変更になったことと、製造年記号のアルファベット付HMになっています。
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 次は、6-97:Q(左)と3-01:U(右)ですが、数字フォントが変わったのとハイフンが省略されています。
サン バッジ カンパニー&エル・エー・ピー・ディー・


 次は、もっとも多く流出??の03-03:Wですが、左と右では仕上げのクオリティなどが異なっています。 左は仕上げも良く、左右のギザギザ(表面の太陽光)も残っていますが、右はヤスリの擦り跡が目立ち左右のギザギザが斜めに擦り取られており表面からは確認できますが裏側からは見えません。
 ちなみに左側はイシュー(支給)バッジで、右側がいわゆるバックドアイシュー(以下BDI)といわれていますが.....?? また、02年製から製造年月の数字フォントが変わり月にもゼロが付くようになりました。
サン バッジ カンパニー&エル・エー・ピー・ディー・


 次は、2004年9月から採用されたフラットバッジですが、サン社が入札の結果契約を取ったため、オフィサーはサン社以外でフラットバッジを作ることはできず、しかも、オーダー・フォームを分署などに提出し、バッジ(ケース付)は所属部署にのみ届けられ、このことは記録され退職時には自費であるにもかかわらず、返納もしくはバッジ上部に”RETIRED”パネルを自費で取り付けるか、ルーサイト(樹脂封入)処理しなければならないとのことです。
 裏面上部に何かを取り除いた跡がありますが、これも2007年見学時に確認したところ、フラットバッジは裏面にピンがないため、メッキ液につけるための吊り下げワイヤーを取り付けるため臨時にクラッチピン状の金具を取り付け、メッキ終了後に取り去るとのことでした。左の04年製はピン除去後ヤスリをかけていますが、右の05年製はピン跡が付いたままになっています。 また、05年製は左右のギザギザが見えますが04年製はギザギザが削られ見えません。
サン バッジ カンパニー&エル・エー・ピー・ディー・


 次は、02-05:W(左)、09-06:Z(中)と03-08:Zですが、05年がW....!? これもW=2003年に打ち抜かれHMを打刻されたものが2年後に日の目を見た例で、03-08:Zも同じ例です。 また、2005年にそれまでサンディマスにあった工場が近郊のオンタリオに移転したため、Y記号からHM下部の表記も変わっています。 仕上げの違いは05・08年製がイシュー、06年製はBDIのようですが、ギザギザの見え方も異なっています.....。
サン バッジ カンパニー&エル・エー・ピー・ディー・


 次の左側9-96バッジは驚きの刻印付きで96年製にもかかわらずカーグ・サンのシェルバック状でしかも真中のシティーシールに”P”を打刻していますが、これはグランド・ファザーリングバッジにするためバッジコレクターのオフィサーの要望で特別に作られたもののようです。 右側の03-03バッジはBDIのようですが、本来”W” 記号であるものが3年も遡った2000年を表わす”T”記号になっています。なお、私はHMの中のアルファベットを打ち直した例も確認しています。
 
サン バッジ カンパニー&エル・エー・ピー・ディー・


 最後にさらにマニアックな追求です......サン社の場合表面のデザインは一貫していますが、バッジの厚み、重量、縁取りと裏側の仕様・仕上げが変化してきています。
 まず、バッジを上方と真横から見たもので、左からカーグ・サン、中:スムースバックになった1987年製、右:2002年以降のものですが、徐々に厚みが薄くなり重量も減ってきており、そればかりか2001年製までは抜型したままの縁取りで表面のXモールドを受けた筋が残っていたものを、2002年以降はこれを削ってしまい、そのヤスリ跡が残っているものが多数見受けられますが、これは職人気質の熟練工が少なくなり、臨時工が増えたことでクオリティが落ちていることなどが考えられます。
サン バッジ カンパニー&エル・エー・ピー・ディー・


サン バッジ カンパニー&エル・エー・ピー・ディー・


 LA市では2・3年に一度シリアスな?競争入札を実施するようになったこともあり、2013年からサン社に製造・納品契約が戻ったといってもうかうかしていられないのではないでしょうか? 『出来の悪い子ほど可愛い』 のたとえではないですが、MADE IN U.S.A. そしてサン社大好きの私としては、ただただクオリティを上げる努力を惜しまないでほしいと願うばかりです。 今回の渡米でクオリティの高いENT社製バッジを確認することはできましたが、デェイビス・トレーニングセンターで追試のシューティングをやっていたルーキーは卒業前でまだバッジを貸与されていなかったため、現行のサン社製バッジを確認することができませんでしたので......。
 さて、サン バッジ社のマニアックな大特集?いかがでしたでしょうか? 今回の渡米で得た情報は、『裏話』 的なものもあり、ブログ上では全て書けないためイマイチの内容ですが.....でも既報コメントで少し触れているかもしれません......!? また、諸般の事情??でカタカナばかりでスミマセン.....!?
 最後に、今回お世話になった方々へ "Special thanks to S.K. J.Z. and R.S." !!



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この記事へのコメント
 Kent 様

 いつも楽しく拝読しております。

 さて、LAPD関連記事、本当にご馳走様です。
 17~8年前にアームスマガジンに、米国警察の特集記事があり、LAPDに関する記載もありました。
 ダイ・ハード、Heat,リーサル・ウェポンをはじめスクリーンやブラウン管のヒーローが所属するLAPDは、
当時の中学生だったわたくしのテンションを明後日の方向に跳ね上げてくれました。
 
 資料性の高い写真の数々、本当に有難うございます!
Posted by しかみつ at 2015年06月02日 15:20
しかみつさんへ:

コメントありがとうございました。

ちょっとマニアックすぎたかな....? と反省しています....。
Posted by Kent SpaceKent Space at 2015年06月05日 15:25
 Kent 様

 いえいえ、特濃ブログをわたくし以外にもきっと多くの人が楽しみにしていますから、引き続きよろしくお願い致します。
Posted by しかみつ at 2015年06月09日 21:22
Kent様、
いつも楽しみに拝見しております。
S6について質問です。何故特段03-03Wが多く流出しているのでしょうか?イシュー、BD含めてです。よろしくお願いします。
Posted by 1968LA at 2015年09月06日 09:05
1968LAさんへ: コメントありがとうございました。

ウ~ンッ.....ブログでも触れましたが、サン社のファクトリーを見学した折、熟練職人さんが少なくなっているように感じましたが......他のウワサ?などは活字で残すことは憚れますので、ヴィクトリーショ―の会場ででもお声がけください.....スミマセン.....。
Posted by Kent SpaceKent Space at 2015年09月06日 17:02
Kent様、

早速の回答ありがとうございます!
残念です、地方に住んでおります為ショーにはなかなか参加できずにおります。。。
また機会がありましたらお声かけさせていただきます。
Posted by LA1968 at 2015年09月06日 21:25
はじめまして。
最近バッジに興味を持ちはじめました。
画像を観ていて気づいたのですが、同じLAPDバッジでも、メーカーによって裏面のピンの位置が違うみたいですね。
それならば、バッジケースに取り付けた際に、カットアウトの位置と合わなくなるんでは無いでしょうか?
また、ピンの位置が上過ぎたり、下過ぎたりした場合、後から修正変更できるのでしょうか? エナメルがあるため、ピンロウ付けが出来ないかも知れませんね。
Posted by とんぼ at 2016年05月16日 14:37
とんぼさんへ: コメントありがとうございました!

基本的には発注規格書があり裏面のピン位置なども規定されているはずですが、多少の位置ずれなどはあるのではないでしょうか。
この辺は、バッジケースの方で受け入れできるよう、ピン&キャッチ位置に余裕のあるカットをしてありますが、それでも合わない場合は自分で切り取るなどして合わせることはよくあることです。
ピンなどが取れた場合はメジャーなバッジメーカーは永久保証をしていますので修理は可能ですが、安価なバッジケースのためにピン位置を修正することなどあり得ないのではないでしょうか。
Posted by Kent SpaceKent Space at 2016年05月16日 15:29
Kent様
回答ありがとうございます。  
なるほど。アメリカ人のバッジに対する感覚は、日本的な物作りとは違うのですね。
高価なLAPDリプロバッジを入手したのですが、面側は良い出来なのに、裏側のピンが中国製みたいないい加減な付け方で、斜めに歪み、かつ、かなり下側よりについてます。
けっこうアバウトみたいなので、それを受け入れてコレクションしていかないと、気疲れしそうですね。
Posted by とんぼ at 2016年05月16日 16:11
質問です。
本来ゴールドの部分にアメリカ製だから?クロームメッキがかかってしまっている箇所をゴールドにするには、ひたすら磨いて地金を出せばいいんですかね?
Posted by ゴールド at 2019年04月07日 14:54
ゴールドさんへ:コメントありがとうございました!
LAPDバッジの場合、真鍮と銅の合金を使用しており、シルバー部分はクロームメッキしていますが、ゴールド部分はクロームメッキがかからないようマスキングを付し地金色を保持して仕上げに研磨しています。
おたずねの、本来マスキングされていなくてはならない部分にクロームメッキがかかってしまっている場合は、それを剥離させれば地金色が出るでしょう。
実物のLAPDバッジのクロームメッキは厚めにかかっていますので、それを剥離させるのは根気がいる作業になるにのではないでしょうか。
剥離した後は、金磨きなどで研磨しクリアコートをしておけば変色を防ぐことができます。
Posted by Kent SpaceKent Space at 2019年04月07日 18:08
実物のLAPDバッジについて、ちょっとお聞きしたいことがありますが
LAPDバッジHM sunbadgeが「V」の時期に生産しているデザインには日付付きのものと日付なしのものがありますか。
2種類のモデルを見たことがありますが、あなたの意見を聞きたいです
よろしくお願いします
Posted by hkdea at 2023年10月04日 23:36
hkdeaさんへ: コメントありがとうございました!
返信が遅くなり失礼しました。
私は、今までにサンバッジ社が製作した支給バッジや不良品の流出バッジで製作年月の刻印されていないものを確認したことがありません。
HMや製作年月は、ダイから打ち出されたフラット状態の時点で打刻され、その後にドーム曲げとピン付けからハードエナメル焼入れやメッキ処理などの後、最終的に検品され納品分と不良品に分別されるとのことですが、もしHMや製造年月刻印を忘れていた場合は機械彫で刻印しているようです。
HMや製造年月の刻印がない状態で検品を通過することはあり得ないと思いますが、不良品として分けられたものの中には無刻印もあるのかもしれません。
Posted by Kent SpaceKent Space at 2023年10月16日 23:07
 
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