2014年07月07日

U.S. Secret Service

 今年の5月7日付で読者の方から 「先日オバマ大統領が来日しましたが、その際に随行していた U.S. Secret Service にとても興味を持ちました。 もし U.S. Secret Service 関係の記事、写真等がありましたらで見てみたいです。」 というコメントをいただきましたので、遅まきながら、バッジなどを中心に探ってみました。

 “U.S. Secret Service” (以下USSS) というと一般的には 『米国大統領の専任警護官』 というイメージですが、元々は1865年に遡り Department of the Treasury (米国財務省) 内に 『通貨偽造防止』 を目的とした連邦捜査機関として創設されています。 このあたりは、1993年公開のクリント・イーストウッド主演 “In the Line of Fire (邦題:ザ・シークレットサービス)” の劇中で、大統領警護から左遷?され、偽札捜査に携わる主人公の話がありました。 その後、2001年の 『9.11同時多発テロ事件』 をきっかけに、連邦捜査機関の見直しが図られた折、新設された Department of Homeland Security (米国国土安全保障省) に管轄が移っていますが、偽造通貨捜査権は引き継いでいるようです。
 ワシントンD.C.に本部があるほか全米に136ヵ所の事務所があり、主に大統領の視察地警護の詳細な計画・実施などを行いますが、通常でも大統領などに危害を与える恐れのある人物の把握を怠りません。 SPECIAL AGENT (特別捜査・警護官) になるには、米国市民である21〜37歳であることが条件のようですが、特別な資格を所持している場合は37歳以上でも可能なようです。 また、Special Officer と呼ばれる、運転技術、通信技術を始めセキュリティ全般に通じた専門官が配属されていますが、こちらは地域警察を含む法執行機関を8年以上経験していることが条件であるようです。

 特別仕様の大統領専用車から降りるオバマ大統領。分厚い防弾ドアです。
U.S. Secret Service


 常に周囲に目を配らせ、大統領を取り囲むように警護にあたる Special Agent 達。

U.S. Secret Service


 そのほかにホワイトハウスなどの大統領関連施設などを制服で警備する “U.S. Secret Service Uniformed Division” という部門もあり、制服用のバッジが支給されていますが、CS (Counter Sniper Team:狙撃班)、ERT (Emergency Response Team =SWAT)、Canine Explosives Detection Unit :K-9 警察犬使用の爆弾探索班) には、“TECNICIAN” というタイトルのバッジが支給されているようです。
 画像は、 Uniformed Division のバッジとオフィサーです。

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 さて、次の画像左端はUSSSの初代シリーズ1バッジ、中央はシリーズ2バッジ、右端がシリーズ3バッジです(14/7/17訂正)。

U.S. Secret Service


 次の画像は現行シリーズ4(訂正) の実物バッジですが、2003年3月にそれまでの財務省管轄から国土安全保安省管轄に移管された時にデザイン変更されたもので、左側はラージサイズ・ピン&セフティーキャッチ付左右にゆるく反っているランクタイトル "SPECIAL AGENT" のバッジ、右側はスモールサイズ・クリップ付フラットバッジでランクタイトルは "TECNICIAN" です。 製作は当初から SUN Badge 社が請け負っていますが、Die:ダイ(金型)は USSS 担当部署で保管・管理しているとのことで、2007年 SUN Badge 社見学の折に見ることはできませんでした。
 両バッジ共、センターの5ポイントバッジと下部のランクパネル部分は別部品仕様になっています。 また、最下部のナンバーパネル状の部分にバッジナンバーの刻印はなく、コントロールナンバーは裏面にのみ刻印されているようです。 連邦系組織のバッジ表面にバッジナンバーを刻印していることは少なく、私の知る範囲では ICEとATF などが確認できますが、バッジ表面へのナンバー表示は元々、ユニフォーム・オフィサーがネームプレートを着用していなかった時代に、個人を特定する手段として用いられたようですので、ユニフォームを着用しない連邦組織では裏面にナンバーを刻印することで、バッジ・コントロールをしていると思われます。

U.S. Secret Service


 次の画像は、左側のFBI バッジとのサイズ比較ですが、FBI バッジの縦サイズが2・1/8" (約55mm)であるのに対し、USSSのピン&セフティーキャッチ付バッジは3・1/8” (約80mm)で、スモールサイズのクリップ付フラットバッジは2・1/2" (約65mm)です。
 「連邦系のバッジは全てクリップ付ですか?」 と質問されることがあるのですが、FBI は小さめのピン&セフティーキャッチ付がイシューで、セカンドバッジの作製を認めていないようですので、クリップ付のイシューバッジは存在しないことになります。 また、USマーシャルとDEA はイシューでもクリップ付であるのに対し、USSSはラージサイズはピン&セフティーキャッチでスモールサイズのフラットバッジはクリップ付ですので、一概に言うことはできませんが、ピン&セフティーキャッチ付の方が多いように思います。 元々、法執行機関のバッジは、ピン&セフティーキャッチ付バッジがスタンダードで、クリップ付はワレット用のフラットバッジやセカンドバッジに多用されたものですので、ユニフォーム着用の組織はほとんどピン&セフティーキャッチ付のバッジですが、ワレット用のフラットバッジを支給もしくは所持をを認めている組織ではクリップ付のバッジも存在することになります。

U.S. Secret Service


 大統領などを警護中の Special Agent は男女共ダークスーツを着用し、耳には無線用のイヤフォン、ベルトにはサービスガンである SIG P-229 (357SIG) とバッジクリップに装着したラージサイズのバッジを着用している姿が確認できますが、ほかにも識別の為かスーツの襟には八角形状?のラペルピンを着用しており、赤・青・緑など何色かのパターンがあり任務により色を変えているようです。

U.S. Secret Service



 スーツ姿のSpecial Agent の傍らで、出動準備中のBDU 着用者は Counter Sniper Team でしょうか? だとしたら、バッジのタイトルは ”TECNICIAN” ?

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 最後に登場は、私が大ファンのクリント・イーストウッド主演で1993年公開の “In the Line of Fire (邦題:ザ・シークレットサービス)” で、当時現役であったシリーズ3(訂正)のバッジを掲げている場面です!

U.S. Secret Service


※USSS について、さらに詳細な内容が知りたい方はWikiPedia などを参照してください。
http://en.wikipedia.org/wiki/United_States_Secret_Service
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E5%90%88%E8%A1%86%E5%9B%BD%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%93%E3%82%B9



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Posted by Kent Space at 20:56│Comments(13)From U.S.A.
この記事へのコメント
 Kentさん

 こんにちは。
 いつも楽しく拝読しています。
 USSSの記事とても参考になりました。

 連邦系は、ユニフォーム着ない機関の人たちのバッジについて、
入手したレプリカバッジたちも皆ウォレットクリップのみだったこともあり、
ピンじゃないだろうと勝手に思い込んでおりました。

 本当に勉強になりました。

 警護員のラペルピンは我が国にも複数色あり、
朝のブリーフィングで決めると聞いたことが有ります。
 ちゃんと師匠の教えを踏襲しているんですね。
Posted by しかみつ at 2014年07月21日 11:39
しかみつ さんへ:

コメントありがとうございました!

 クリップ付バッジは、ワレットに携帯したり、ベルトクリップに付け替えたりできるので便利なのですが、LAPD、SFPDや多くのPOLICE Dept. ではワレット用フラットバッジは、グル―(接着剤)貼りがほとんどのようです。これは制服用ピン付ブレストバッジとは別の携帯専用で、付け替える必要がないためではないでしょうか。
Posted by Kent SpaceKent Space at 2014年07月21日 16:04
 Kentさん

 早速のご返信痛み入ります。
 バッジのつけ外しては間違いなく面倒だと思われますので、携行用のフラットバックのglueは現職さんには極めて便利な装備となったことでしょうね。

 ところで、機関からの正式貸与のバッジ以外のフラットバッジの法的効力について、州法と連邦法や下位法、条例その他により個々別々ではあるかと思いますが、米国の法体系においてはどのように考えられているのでしょうか。

 バッジとクレデンシャルで身分を証明することになっていると聞いたことがありますが、現職さんが持つ限り、機関からの貸与品としてのセカンドであれ、私費購入のセカンドであれ、ちょっとした遊びココロで買ったリプロダクショなどでも、有効な身分証明としての法的な効力を持つのでしょうか。

 Kentさんも御存知の通り、我が国の法体系においては、勤め先官公庁から正式に貸与された身分証票とバッジ以外は、模造品、贋作、偽造品となりますので、公文書偽造や公記号偽造及び不正使用等に問われます。

 米国で現職警察官のセカンドバッジ携帯に関する法規定や、偽造罪について免責などの制度はないのでしょうか。

 いきなり質問攻めにしてしましい、申し訳ありません。
 お手隙の際にでもご教示頂ければ、幸いです。
Posted by しかみつ at 2014年07月23日 18:46
しかみつさんへ:
コメントありがとうございました。

 以前、現役LAPDオフィサーの友人にバッジについて聞いたことがあるのですが、厚さ約3センチはあるLAPDマニュアルに何か所か規定されているそうです。
 まず、ユニフォームには、“official badge currently issued(支給された現行制式バッジ?)”を所定位置に市民に見えるよう着用すること。また、私服勤務時(潜入捜査時を除く)には、バッジとIDカードを必ず携帯し、必要に応じて提示もしくは着用することとなっているそうです。他には、盗難・紛失・修理の場合は、直ちに上司に報告した上で、所管課所に申請することなどが規定されているそうです。また、勤務以外でも常にバッジとIDカードを携帯しなければならず、旅行などでも必ず携帯していますので、某国のように旅行など私用時には携帯できない......と伝えると、友人は「なぜ!?」と不思議がるのでした。
 他には、LAPDでは支給バッジ以外は、2005年から本部に申請・許可のもと携帯用のフラットバッジを1個のみ自費にて購入できるようになったとのこと。また、退職時には支給バッジを購入することもできるそうですが、アカデミーのオフィサーズショップに申請し、“RETIRED”のパネルをバッジ・トップに取り付ける処置が必要で、費用は自腹だそうです。また、サービスガンやハットバッジも申請後購入できるそうです。退職後もRETIREDパネルの付いたバッジとRETIRED用のIDカードを携帯することにより、LA市内では、事件・事故発生時に協力したり、銃も携帯できるそうです。
 今回友人に「勤務中に偽バッジを着用できますか?」と問うたところ、月に1回以上(抜き打ちも有)あるクラスAユニフォーム着用のINSPECTION(点呼・点検)は、署長(CAPTAIN)によるものだけでなく、それ以上のハイランクや本部長が訪問する場合もあり、そこで着用することは考えられないが、通常勤務時であれば、「本物のオフィサーが着用すれば全て本物」だよねと、笑っていましたが、「なぜ偽物を着用する必要があるのか?」と逆に質問されてしまいました。LAPDはNYPDなどよりはバッジコントロールが厳格なようです。
 ということで、私も法的な部分までは詳しくないため、これ以上のことはお伝えできませんが、連邦系法執行機関のバッジの裏に『このバッジは身分証明書と対で有効である』というような、注意書きがあるものもありますが、私服勤務の場合、市民は疑いたくもなるのも確かではありますね!?
Posted by Kent SpaceKent Space at 2014年07月24日 18:49
 Kentさん

 迅速な返信、本当に有難うございます。

 大変参考になります。

 RETIREDパネルの身分証の交付は、興味深いお話でした。
 予備自衛官や交番相談員をより柔軟にしたような制度ですね。
 退職警察官の有効な活用について、メリケンの方が進んでいるんですね。

 さて、元の質問に丁寧にご回答下さいましてありがとうございます。
 本物とは何かを考えだすと、深みにハマりますね。

 極東某国の警察官の中には、貸与品を紛失するととんでもないことになるので、デモ視察や雑踏警戒などの荒場用に私費購入の予備品を携行される場合も結構あります。

 ともあれ、極東某国においては本物以外の手帳の行使については、デュープロセスに引っ掛かる可能性を否定出来ないので、ご法度ですが、バッジケースのリセスのアソビも含めて、アメリカのバッジ事情は極東某国と随分異なりますね。

 Kentさんのしんどくない範囲で、これからも沢山教えて下さいね!

(遅ればせながら、The Closerのファイナル・シーズン見ました。
 以前の記事でKentさんがご指摘されていた通り、バッジは横に
反ってました!スピンオフのMajor Crimesの反りっぷりも満喫中です。)
Posted by しかみつ at 2014年07月25日 00:27
いつも更新を楽しみにしています!
次はFBIのバッジについて取り上げてください。
Posted by SPECIAL AGENT at 2014年07月25日 17:46
SPECIAL AGENT さんへ:

コメントありがとうございました!
皆さんからいただくコメントが励ましになります!

FBIバッジについては、近々取り上げたいと思います。
Posted by Kent SpaceKent Space at 2014年07月26日 17:33
 お世話になります
仕事に忙殺されておりましたが、少し時間ができてブログを拝見させて頂きましたら素晴らしい記事をのせて頂き、本当に感謝です
何度も何度も読み返してしまいました シークレットサービスのbadgeにセカンドbadgeがないことは知っておりましたが、色々なサイズがあることにびっくりしました 
ちなみにヴィクトリーショーにシークレットサービス関連のグッツの出品のご予定などはありませんでしょうか?
遅くなってしまい申し訳ありませんでしたが、素晴らしい記事を乗せて頂きましてありがとうございます
Posted by ヴィクトリーショーに行きました at 2014年07月29日 19:42
ヴィクトリーショーに行きました さんへ:

ご要望にお応えできていましたら嬉しいです!

さて、Kent Spaceでも現行USSSのレプリカバッジを取り扱っていますので、次回9月のVショーでご覧になってください。
Posted by Kent SpaceKent Space at 2014年07月30日 13:10
唐突に質問させていただきますが、シークレットサービスの捜査官はメガネやコンタクトを使用しているものは採用しないと聞いたことがあるのですが、記事の画像にはメガネを使用している捜査官が見えます。
 実際のところあまり厳しい採用基準でゃないのでしょうか?
また、メガネ等を使用していると採用されない連邦機関は何があるでしょうか?
 連邦捜査官に興味があるので質問させていただきます。回答よろしくお願いします。
Posted by agnt at 2014年12月01日 17:18
agnt さんへ:

コメントありがとうございました。

 さて、USSSホームページの採用基準には...
”Have uncorrected vision no worse than 20/60 binocular; correctable to 20/20 in each eye (NOTE: Lasik, ALK, RK and PRK corrective eye surgeries are acceptable eyes surgeries for special agent applicants provided specific visual tests are passed. The following are the waiting periods before visual tests are conducted after the surgery: Lasik surgery–three months; PRK–six months; and ALK and RK–one year.)”
...となっており、視力は両眼で20/20(1.0)以上であることが基準のようです。しかし、20/60(0.33)でもレーシック手術により1.0になる場合はOKのようですが、眼鏡等の使用は認めていないようですね。
 FBIでは条件限定でソフトコンタクトレンズの使用も認めているようですが、詳しくは各連邦系機関HPの採用基準などをご覧ください。
Posted by Kent SpaceKent Space at 2014年12月01日 18:03
回答ありがとうございます。
採用基準・・・マニアの私としては意外な盲点でした。早速確認してみたところ、usマーシャルとdeaがメガネを認めているようですね。
まだまだわからないことだらけな私にとってこのような記事はとてもありがたいものです。これからも、よろしくお願いします。
Posted by agnt at 2014年12月03日 21:34
To geRoesonbewさん、gayenKinkkoさんへ

コメントをいただきましたが、文字化けしており判読できませんので、日本語もしくは英語でお送りください。

I'm sorry, I can't read your message. Is it in Japanese? The characters are garbled.
Send it in Japanese or English, please.
Posted by Kent SpaceKent Space at 2014年12月26日 17:35
 
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