2016年08月07日

連邦系法執行機関(フェデラル・ロウ・エンフォースメント)#2

 今回は、前回のディー.イー.エー.に続きメジャーな連邦系とも考えたのですが、長い歴史の中でいくつかの組織に枝分かれし現在に至っている、私的に思い入れのある組織を取り上げてみることにしました。
 それは米国財務省管轄のインターナル・レベニュー・サービス略してアイ.アール.エス.:内国歳入庁(日本で例えれば財務省内局の国税庁か)に属するアイ.アール.エス.‐クリミナル・インベスティゲーション(内国歳入庁犯罪捜査部?)ですが、遡れば有名捜査官や現在ではメジャーになった組織が枝分かれしていたりという興味深い組織でもあります。
 やはり詳細についてはネットで検索していただくとして、バッジを中心にお伝えします。
 まず、アイ.アール.エス.:内国歳入庁は国の根幹である国税徴収を目的に1862年に創設されていますが、脱税などの調査・捜査のためのバッジAを設定したのは1869年と古く、さらに1920年に成立した悪名高い?『禁酒法』 によりビューロー・オブ・プロイビィション(酒類取締局:ランクタイトルのプロイビィション(PROHIBITION)は直訳すると禁止)が設けられバッジBとなり、アル・カポネなどの犯罪者と対峙することになります。
 そして、かの有名なエリオット・ネス隊長が参加することになるのがバッジC・Dの時代ということになり、往年のTVドラマや映画でお馴染みの 『アンタチャブル』 ということになります。そのネス隊長はエフ.ビー.アイ.の捜査官といわれていますが、実はアイ.アール.エス.のビューロー・オブ・プロイビィション(酒類取締局)の捜査官であり、その後もエフ.ビー.アイ.に所属したことはなかったということです。
 その後1933年に禁酒法が廃止さてるとビューロー・オブ・プロイビィション(酒類取締局)からバッジEのアイ.アール.エス.・インベスティゲーターとなり1952年にバッジFとなるのですが、ここで下部パネルのアルコール・アンド・タバコ・タックスというタイトルに注目してください!?
Photo by エー.ティー.エフ.
連邦系法執行機関(フェデラル・ロウ・エンフォースメント)#2


 次の画像は実物エリオット・ネスの1927年発行ビューロー・オブ・プロイビィション(酒類取締局)のIDです(1934年頃まで所属)。
連邦系法執行機関(フェデラル・ロウ・エンフォースメント)#2


 そして1987年公開の ”The Untouchables” (邦題:アンタッチャブル)のケヴィン・コスナー演じるエリオット・ネスですがバッジCじゃなくてDモドキでしょうか??
連邦系法執行機関(フェデラル・ロウ・エンフォースメント)#2


 私は、1956~1963年までTV放映されたロバート・スタック演じるエリオット・ネスがシックリきます.....。
連邦系法執行機関(フェデラル・ロウ・エンフォースメント)#2


 話をもどして.....そーです、この後2つの捜査組織に枝分かれするのですが??
 次の画像がその回答となります。
 バッジGはアルコール・タバコ&ファイアーアームスとタイトルは変わっても、まだアイ.アール.エス.:内国歳入庁の所管ですが、ここから同じくアイ.アール.エス.:内国歳入庁・クリミナル・インベスティゲーション:内国歳入庁犯罪捜査局?(現行のサービスガンはグロック22・27))のバッジHへ、そしてアイ.アール.エス.:内国歳入庁から1972年に独立しアルコール・タバコ&ファイアーアームス略してエー.ティー.エフ.(アルコール・タバコ・火器局)のバッジI へ、さらに2003年からは財務省から司法省へ管轄が移りアルコール・タバコ・ファイアーアームス&エクスプローシブス(アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局:現行のサービスガンはグロック22・23・27)のバッジJへとなっていくのです。
 なお、画像のバッジのエナメル部分は全てブルー・ハードエナメル仕様です。
Photo by エー.ティー.エフ.
連邦系法執行機関(フェデラル・ロウ・エンフォースメント)#2


 さて、米国の連邦系法執行機関の犯罪捜査部門は120機関にも及びますが、わが国では考えられないですが、脱税は国税であれば武装したアイ.アール.エス.・クリミナル・インベスティゲーション(内国歳入庁犯罪捜査部?)に捜査・逮捕され、銃器や爆発物はまだしもアルコールやタバコの違反行為もエー.ティー.エフ.に捜査・逮捕されるかもしれないのです!?
 さて、次回は.....。



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Posted by Kent Space at 19:12│Comments(5)From U.S.A.Movie & TV
この記事へのコメント
Kentさん

いつも楽しく拝読しております。
始めて下さったFederal LE特集に狂喜乱舞しております。

さて、記事中Fバッジ以降ナンバーパネルが追加されていますね。連邦系ではFBIやDEA、USSS、NCIS、CIDなどナンバーパネルのない機関が多いような印象ですが、この差はどこから来るのか気になります。

と言いますのも、数多の法執行機関を抱えるアメリカでは、番号表示の仕方についてどのように運用されているのか、気になったためです。

公開されている資料などを読みますと、うちの国の警察は不祥事が頻発した2000年代初頭に、警察刷新委員会の勧告を受けて、制服警察官の階級章上部に識別章を導入しましたが、これもあくまで『日常的に住民と接する制服警察官』に限った運用で、留置管理(看守)業務や雑踏警備、暴力団のガサなどは、番号表示の適用除外となっています。留置管理は住民と接するわけでなく、雑踏警備は非日常で、暴力団ガサについては非日常で住民ではない上、個人特定による報復などを防ぐ目的で適用除外となっているようです。
同時期に導入されたバッジ型警察手帳も証票部(IDカード)には番号が入っていますが、記章部(バッジ)には番号表記はなく、一旦貸与されると階級が変わるまで人事異動しても同じ物を使い続ける手帳に比べ、識別章番号は所属によって変わる都合で、識別章は手帳番号と識別章番号は同一ではありませんでした。

警察官の識別章番号開示が強制要件となっていないところを考えますと、Need to know的な住民サービスと言った趣きが強いのかもしれません。

反社会的勢力から警察官を対象とした個人攻撃や報復は避けるよう最大限に組織として対応してあげて欲しいと思う一方、他方で守るべき国民が警察官の責任について不明瞭な職務執行によって、傷つくようなことはあってはならないことだとも感じます。

訴訟大国アメリカの法執行機関では、どの様な運用事情なのか御存知でしたら、お知恵付け頂きたく存じます。
Posted by しかみつ at 2016年08月08日 04:12
しかみつさんへ: コメントありがとうございました!

連邦系のバッジについてはナンバーを表面パネルに表示する場合、パネルはあっても表示せず裏面に刻印する場合と表面にパネルもなく裏面に刻印する場合がありますが、あくまでも個人とバッジをつなぐコントロール・ナンバーであり、さらに紛失・盗難などに対応するためのものでもありますので、IDのシリアル・ナンバーとは別管理となっています。
IDのシリアル・ナンバーは全職員の管理用であり退職・新採用などにより同じナンバーが重複することがないよう一括管理されています。

また、連邦系を問わず制服を着用するオフィサーの場合、米国では1970年代からネーム・プレート(名札)の着用を義務付けておりバッジ・ナンバーがなくても個人を特定できますが、私服捜査官においてもバッジはIDと対で両方提示して初めて有効となる旨規定されています。

米国におけるバッジは、制服のない遥か昔から 『胸に輝く銀の星』 は法執行官のシンボルであり、さらに、プライドを誇る象徴でもあるため、その思い入れは特に深いのではないでしょうか。

米国においてもオフィサーに対する報復もありますが、氏名を知られるリスクよりも国民に対する行為に責任をもたせることを優先する伝統があるようです。 また、オフィサーに対する攻撃・報復に対しては徹底した究明・処分が下されることも米国の伝統といえるのではないでしょうか。

わが国では、以前と変わらずIDカードに重きをおいているようなので、バッジは所属本部のみが表記されている付属物のように見えます.....しかし、バッジに階級などが表示されていないので退職するまで使用できるのは効率的?とも言えますが、ポリスオフィサーのプライドを象徴する米国のバッジとは異なるようにも思えます.....。
Posted by Kent SpaceKent Space at 2016年08月08日 15:17
 Kentさん

 返信ありがとうございます。

 バッジナンバーとシリアルナンバーの件、勉強になります。
 NYPDのオフィサーランクやLAPDのGrandfatheringnなど、バッジナンバーの使い回しの記事もありましたね。

 米国の法執行機関のうち地方機関は、住民の有志によって組織された自警団や、住民の互選によって選ばれた岡っ引きなど、住民自治の発露として設立された経緯が、「氏名を知られるリスクよりも国民に対する行為に責任をもたせることを優先する伝統」に繋がっているのかも知れませんね。
 もっとも、今回の特集である連邦機関の場合は、独立宣言や合衆国憲法修正2条に象徴される、「自由で民主的な国家は大事にしようぜ、そうでない国家は武装して転覆させてもOKよん」みたいな国家の政府としての、在り方のようにも思えます。

 「米国におけるバッジは、制服のない遥か昔から 『胸に輝く銀の星』 は法執行官のシンボルであり、さらに、プライドを誇る象徴でもある」ここにバッジ文化の真髄があるのでしょうね。

 歴史や法規、国民性や文化的背景など、様々な要素に思いを馳せながらバッジ眺めますと、心なしか一段と光って見えて来ます。

 本当にいつも、素敵なブログをありがとうございます!!
 お体に無理のないペースで結構ですので、今後とも御善導頂けましたら幸いです。
Posted by しかみつ at 2016年08月10日 01:39
NASAなども含め、バッジに施設警備部門?のようなプロテクトサービスとか、ポリスとか、スペシャルエージェントの表記があったりするのですが、警備以外の業務はどんなものなのでしょうか?
通常の警察官と特別捜査官のようなランク分けになっているのでしょうか?
Posted by People at 2016年08月12日 00:17
Peopleさんへ: コメントありがとうございました!

連邦系で付属施設の警備などを担当する場合は、主にPOLICEやプロテクト・サービスなどの制服部門を設置している組織が多いようです。

スペシャルエージェント(特別捜査官)は所属する組織において犯罪捜査などにあたる専門捜査官で、主に私服で活動しますが、制服部門と捜査部門とでは採用時点から別で、バッジもランクも別々に設定している場合が多いようです。

連邦系のスペシャルエージェントがタクティカル装備やレイド・ジャケットにPOLICEの表示をすることがありますが、これはDEAやATFなどの略表記では一般市民にロウ・エンフォースメント・エージェントとして認識してもらえないかもしれないということで、POLICE表記を足しているようです。
ちなみにFBIは自他ともに認める?有名組織なためか、FBIのみの表記で自信をもっている?ようです。
Posted by Kent SpaceKent Space at 2016年08月12日 16:03
 
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